【ライブレポート】Official髭男dism「one – man tour 2021-2022 – Editorial -」 2022.03.19@さいたまスーパーアリーナ

「前も後ろも関係なく楽しませる」──そんな言葉が何度か、さいたまスーパーアリーナの広い会場に響き渡る。それを体現するように、演奏・映像・照明・言葉、すべてがエンターテインメント性に満ちたライブだった。

2021年9月から2022年4月にかけて開催されるOfficial髭男dismの全国アリーナツアー『one – man tour 2021-2022 – Editorial -』。今回は、髭男初のさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブとなった、2022年3月19日の公演の模様を記しておく。

会場が暗転すると、ステージに現れたのはメンバー…ではなく、どこかの部屋の様子を映したスクリーン。どうやら、部屋の主の視点になっているようだ。ベッドから起き上がり、床に散らばった楽譜を拾う。部屋には『Pretender』のジャケットに使われていたニキシー管時計や、MVの撮影地を映したと思われる写真が飾られていて、ここからどのようにステージが始まるのか期待が高まっていく。

まもなく、部屋の主はピアノの前に座る。それまで静かだった会場に、映像から流れる鍵盤の音が響きわたる…と思った矢先に聞こえてきたのは『Universe』のイントロ。

舞台が明るくなり、いつの間にかステージにはOfficial髭男dismのメンバー4人とサポートメンバー6人の姿がある。映像とステージが見事にリンクした幕開けだった。

『Universe』

「こんばんは!さいたまスーパーアリーナ!」とボーカルの藤原が叫び、まさに「観客への挨拶」ともとれる『HELLO』が演奏される。1音1音力強く刻まれる松浦のドラム、胸に沈み込むように響く楢崎のベース、鋭いカッティングが光る小笹のギター、サポートメンバーも含め、それぞれが奏でる音がさいたまスーパーアリーナの会場に響きわたる。

ステージ上の4分割されたスクリーンには、メンバー4人それぞれの姿が映し出されていた。その表情を見る限り、さいたまスーパーアリーナという大舞台でライブができる喜びがひしひしと伝わってくる。

『HELLO』

楽曲は『宿命』『115万キロのフィルム』と続く。

「初めてのさいたまスーパーアリーナ。夢を叶えられたのはみんなのおかげ」と伝える藤原。思えば、『115万キロのフィルム』は2019年に開催された初の武道館ワンマンライブの冒頭で披露された曲で、こうした記念すべき舞台で演奏され続けていくのは感慨深い。演奏が終わり、藤原が客席を見渡して微笑みながら頭を下げていたのも印象的だった。

『115万キロのフィルム』

ここで1度ステージが暗転し、再び照明がつくとステージでは藤原がギターを手にしていた。「えー、ピアノボーカルがまさかのギターを鳴らして驚かせたかったのですが…」と、まさかの機材トラブルが発生したことが伝えられる。再開できるまで、少し時間がかかるらしい。不測の事態に、楢崎が「俺ギター弾いてもいい?」と藤原と場所をチェンジ。

楢崎「たまアリでギター弾いたことない」
藤原「いや、あなたはどこのアリでもないと思うけど」

ギターを手にした楢崎がアルペジオを奏でだし、コロナ禍で練習したという『思ひで』(深夜食堂の曲)を披露。

続けて藤原もピアノの前へ向かい、「今日聞けるかと思っていた人ごめん、バンドじゃ難しすぎるから弾き語りで」と告げながら、昨日情報解禁されたアニメ「SPY×FAMILY」のオープニングテーマ『ミックスナッツ』を1コーラス弾き語りで披露。(ちなみに、「勝手に解禁してポニーキャニオンの人に怒られないか心配」とライブの最後に言っていた)

想定外の事態だったが、観客にとってはむしろラッキーとさえ思えてしまう時間だった。

『Bedroom Talk』

この後、無事にライブは再開。ギターサウンドが濃くなり、よりセンチメンタルな印象になった『Shower』、鉄琴やフルートなど多彩な楽器の音色が響く『緑の雨避け』(冒頭では楢崎が指揮棒を振る場面も!)と、アルバム『Editorial』からの曲が続く。

曲にあわせて変化する照明も印象的で、『Bedroom Talk』ではピンク色の穏やかなライトが部屋の1室を、『Laughter』では曲が進むにつれて自由に動き回る光が、檻の中から飛び立った鳥を表現しているようだった。

松浦作曲の『フィラメント』のイントロが流れ出すと、躍動感のあるビートにあわせて、会場に自然と手拍子が沸き起こる。

ラストで照明が不穏に点滅したかと思うと、スクリーンに浮かび上がったのは『Anarchy』の文字。なお、Anarchyは年明け以降の公演で、セットリストに1曲追加される形で披露されている。他の曲を削らずに最新曲を加えている点からも、「今の髭男を惜しみなく見てもらいたい」というメンバーの想いが感じられるようだ。

『Anarchy』

ここからライブは後半戦に突入。後半戦の幕開けに演奏されたのは、Bメロ以降の手拍子とコール&レスポンスが印象的な楽曲『Stand By You』。もちろん声は出せないが、生のライブだからこそ伝わる観客の熱量が、会場一帯で上がる手やクラップから感じられた。

『ペンディング・マシーン』ではカラフルな照明が目まぐるしく動き、会場は一転ダンスフロアのように。『ブラザーズ』では各メンバーをアニメの登場人物に例えた映像がスクリーンに登場し、コミカルな雰囲気を楽しめる内容となっていた。

『ブラザーズ』

続く『ノーダウト』は、スカやレゲエの要素を取り入れたアレンジ版での演奏。途中、小笹とサポートメンバーのレフティが舞台に寝そべって演奏し、そこに加わっていく楢崎を見て「お前もか」と藤原が歌いながら突っ込む一幕も見られた。

『FIRE GROUND』ではメンバーを絵巻風に描いたイラストスクリーンに映し出され、サポートメンバーが四股を踏むような動きを見せるなどユニークな場面も。(なお、この映像は2021年6月開催のライブ『Official髭男dism Road to 「one – man tour 2021-2022」』でも使用されていた)

サイレンが鳴り響き、ステージにスモークが立ち込めると続いて披露されたのは『Cry Baby』。怒涛の展開を見せる楽曲にあわせ、稲妻のような照明がとめどなく光る、1度たりとも目を離せない圧巻のステージだった。

『Cry Baby』

その後はにぎやかなムードとは一転、『Editorial』『アポトーシス』とアルバム『Editorial』を象徴する曲が続く。

ラストに披露されたのは、ライブが出来なくなったコロナ禍で「届いていると信じて作った」という『Lost In My Loom』。「これからも希望を歌っていきたい」という曲前のMC、曲のラストにかけて盛り上がるドラムアレンジから、音楽を通してメッセージを伝えていきたいという髭男の強い想いが汲み取れるようだった。

ステージが暗転し、映画のエンドロールのようにメンバーの名前がスクリーンに映し出されたところで本編が幕を閉じる。

ライブが終盤に近付くと、「時間が巻き戻ればいいのに」なんて思う方も多いだろう。そんな願いを叶えるかのように、しばらく経つとスクリーン上で本編映像の逆再生が始まった。

すべてが「最初」に戻ったところで、もちろん始まったのは冒頭の部屋の映像。本編のラストで『Lost In My Loom』が披露されたことで、ふと気づく。アルバム『Editorial』は、楽曲を生む苦しみや楽しさが描かれていた。この映像は、まさにその楽曲が生まれる過程を映し出したものなのではないかと。

最初と同じ流れで、部屋の主が床に散らばった楽譜を拾う。楽譜を棚に置こうとした場面で、ニキシー管時計の数字が最初とは変わっていることに気づく。数字が以前よりも少なくなっており、映像が単なる「最初」に戻ったのではないことを伝えているようだ。そういえば、この映像は『Pretender』の要素がちりばめられていた。

ある種観客に「予感」させたところで、もちろん聞こえてきたのは『Pretender』のイントロ。この曲で彼らを知ったものの、コロナ禍でライブに行けなかった人も多いだろう。アルバム『Editorial』の収録曲ではないが、セットリストにきちんと組み込む辺りにも「今の髭男をすべて見せる」という意志が感じられる。

『Pretender』

曲が終わり、サポートメンバーを含めたメンバー紹介が行われた。

ラストの楢崎の紹介に入った時、突如会場に「ハッピーバースデー」の音色が響く。そう、前日3月18日は楢崎の誕生日。派手な装飾を施した馬のロボット(新宿のレストランからレンタルしたものらしい)とともにバースデーケーキが現れるサプライズに、会場が一気にお祝いムードに包まれた。

アンコール2曲目は、インディーズ時代から演奏され続けてきた『異端なスター』。ラストの歌詞に入ったところで藤原が

「ならちゃん、誕生日おめでとう。33歳は怖がらずにどうか、色んなことに挑戦してください。
…怖がらずにどうか?  

♪ 怖がらずにどうか〜(歌い出す)」

とアレンジを加え、さいたまスーパーアリーナという大舞台でも彼らの自然体な様子を感じられた瞬間だった。

『I Love…』

ラストに披露されたのは『I Love…』。ブラスサウンドが華やかなこの楽曲は、多幸感にあふれた会場の雰囲気に相応しい。

演奏が終わり、客席へ礼をする中で藤原が「いつでもステージで待っているから!」と叫ぶ。私たちがヒゲダンと再会する次のステージは、ここよりもまた1つ広い会場かもしれない。しかし、どんなに大きなステージだろうと、前の席でも後ろの席でも関係ない。いつだってOfficial髭男dismは変わらない距離感で、音楽を届け続けてくれるだろうから。 

【セットリスト】

  1. Unrverse
  2. HELLO
  3. 宿命
  4. 115万キロのフィルム
  5. 思ひで(※楢崎 弾き語り)
  6. ミックスナッツ(※藤原 弾き語り)
  7. Shower
  8. みどりの雨避け
  9. Bedroom Talk
  10. Laughter
  11. フィラメント
  12. Anarchy
  13. Stand By You
  14. ペンディング・マシーン
  15. ブラザーズ
  16. ノーダウト
  17. FIRE GROUND
  18. Cry Baby
  19. Editorial
  20. アポトーシス
  21. Lost In My Loom
  22. Pretender
  23. 異端なスター
  24. I Love…

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