【ディスクレビュー】アルバム「Editorial」に見るOfficial髭男dismの挑戦

「Editorial」Official髭男dism

2021年8月18日(水)にリリースされたOfficial髭男dismのメジャー2ndアルバム『Editorial』。このアルバムを1つの本に見立てたとしたら、5つの章に分けられると思っている。

メインボーカルとデジタルクワイアで構成された斬新なタイトルチューン「Editorial」はアルバムの序章であり、かつ続くリード曲「アポトーシス」の前奏の役割を果たしていると感じた。ゴールの見えない、作品を生む苦しさを描いた「Editorial」。その歌詞同様に、「アポトーシス」の登場人物たちは、確実に近づくさよならに対しての答えを見つけ出せていない。結局、時の流れには逆らえないとしてこの曲は終わりを告げている。ただ、終わりを迎える恐怖を感じられるのは愛する相手がいるからこそであって、それは、大切な人によって世界が変わる瞬間を描いた「I Love…」にも繋がっているのだろう。

「アポトーシス」

ここまでが1ブロックで、次からは生きていくことを鼓舞するような楽曲が続く。シンプルな構成ゆえに込められたメッセージが響く「フィラメント」は、刻まれる強いビートがまるで闇夜に差す一筋の光のようだ。「フィラメント」が夜明けの曲だとしたら、「HELLO」で描かれているのは苦しい夜を乗り越えた先に見えた晴れ晴れとした風景だろう。怒涛の展開を見せる「Cry Baby」では、もはや生きることへの強い執念すら感じる。

続く「Shower」は情景が目に浮かぶ歌詞が印象的で、まるで1編の小説のようだ。アコーディオンの音色が心地よい「みどりの雨避け」、新生活への希望を歌った「パラボラ」と、生活味にあふれた楽曲が続く。

「Cry Baby」

「Tell me baby」を想起させるようなファンクチューン「ペンディング・マシーン」は、コアなファンなら思わずニヤリとしてしまったのではないだろうか。「ペンディング・マシーン」がSNSでの繋がりに諦めを覚えているのに対して、続く「Bedroom Talk」の主人公は、ネットがあるからこそ現実世界の大切なものに気づいている。どちらもインターネットへの鬱憤が感じられる楽曲だが、異なるアプローチで描かれている。

「Laughter」「Universe」と過去のシングル曲が並び、アルバムは最終章へ突入する。ラストの「Lost In My Room」は、Vo.藤原のハイトーンボイスが叫びのようにも感じられた。冒頭の「Editorial」同様に生みの苦しみが描かれている点で2曲は繋がっている。いわば、「Lost In My Room」は本のエピローグだ。

「Universe」

作品を世に送り出す以上、「最高傑作」を目指して見えない道を辿る辛さは避けられない。結局のところ終わりはなくて、自分がどこかでゴールを決めなくてはならない。

終止符を打つ際に、「これはこうだ」と言い切ることもできただろう。しかし、今作では「絞り出したものは 悔いなどない そう思いたい」(Lost In My Roomより)と、生み出したものが正解か分からないと赤裸々に綴っているのが印象的だ。普通なら格好つけてしまいたいところを、内面を正直に吐露している。音楽シーンの最前に立つ彼らがそんな気持ちを正直に伝えているのは意外性が大きいし、新たな挑戦にも感じた。間違いなく、ヒゲダンの進化を象徴するアルバムである。

「Editorial」 Teaser

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