【ライブレポート】sumika「FANCLUB LIVE TOUR『縁会』 2022」 2022.05.16@Zepp Haneda
2022年4月21日(木)から5月17日(火)にかけて開催された、sumikaの「FANCLUB LIVE TOUR『縁会』 2022」。ファンクラブ限定のライブは一度2021年2月にオンライン開催されたものの、有観客での開催は今回が初めてとなった。本稿では5月16日(月)に東京・Zepp Hanedaで行われたセミファイナル公演の模様を記しておく。
いつものような『ピカソからの宅急便』のSEはなく、今回は舞台が暗転した状態からのスタート。夕暮れを思わせるようなオレンジ色の照明が舞台を彩ると、1曲目に披露されたのは『茜色の群青』。ここ何年もセットリストには組み込まれてこなかった楽曲で、そんなレア曲が一発目から披露されたことからも特別感が高まっていく。
ステージはツアータイトルの『縁会』にちなんでか、縁側から眺める家の庭を想像させるセット。舞台上手にはマスコットキャラクター「いろは」の姿もあった。
2曲目はベースの印象的なフレーズで始まる『MY NAME IS』。ハンドマイクに切り替えた片岡(Vo./Gt.)が舞台を左右に駆け巡り、会場の熱気は一気にヒートアップした。
続く『イナヅマ』では、黒田(Gt./Cho.)がエネルギッシュなギターソロで観客を惹きつける。ソロ明けのパートでは片岡が「好きで嫌い い い」とセルフエコーをかけて歌い、(続けて「セミファイナル ル ル」とも)会場に笑いが起こる一幕もあった。
sumikaのファンクラブ「ATTiC ROOM」は、結成5周年を控えた2018年1月に発足。MCでは当初からファンクラブライブをしたいと話していたものの、なかなか実現できなかったことが語られた。
「今日は4年分の想いを込めてやっていきます。ATTiC ROOMでしかできないことをたくさんやっていくので、楽しんでいってください!」
そんな片岡の言葉の後、荒井(Dr./Cho.)の力強いドラムの音を合図に『ソーダ』のイントロが鳴り響く。と、ここでメインボーカルをとったのはなんと小川(Key./Cho.)。対して、小川と片岡が2人で歌唱する『enn』ではお互いのパートを交代して歌う演出がなされ、まさに「ATTiC ROOMでしかできない」特別な瞬間を見届けることとなった。
本ツアーは3人のゲストメンバーを加えて開催されたが、ここでゲストメンバーは一時退場。ステージに残った4人も一度楽器を置くと、始まったのは「お便りコーナー」。実は、ライブ入場時に観客はQRコードが印字された紙を受け取っており、QRコードにアクセスするとメンバーへの質問が送れるようになっていた。
公演開始までに送られた質問の中から、メンバーが1人1つずつ気になったものを回答していく。将来に関する悩みから、恋愛に関する相談、はたまた「犬派か猫派か美女派か」といった質問まで(ちなみにこの質問に対しては黒田が「美女になりたい!」と叫び、「sumikaには1人美女になりたい人がいる」が結論となりました)答えていくメンバーを見ながら、会場はすっかり和やかな雰囲気に包まれていた。
余談だが、2018年に武道館で行われた「sumika 5th Anniversary『Humor』」でも同じような質問コーナーが行われており、自然と当時の様子を重ねた人もいたかもしれない。
お便りコーナーの後、メンバー4人のみで演奏されたのは『アネモネ』。今回は黒田がアコースティックギターを、荒井がカホンを、小川がピアニカを演奏するアコースティックバージョンでの披露。なお、このアレンジは開催中止となってしまった『sumika Live Tour 2020-2021 -Daily’s Lamp-』で予定されていたもので、配信ライブでは一度演奏されていたが、有観客では初披露となった。
2回目のお便りコーナーを挟み、同じくアコースティックアレンジで『春風』が演奏される。新生活への期待と不安を歌ったこの曲は、GW明けの5月という時期にぴったり合っていた。
ゲストメンバーが戻ってきたところで、いよいよライブは後半戦に突入。ソロ回しをしながらのメンバー紹介を挟み、ライブ定番曲『ふっかつのじゅもん』が始まると会場は一気にお祭りムードに。
『ライラ』では手拍子が沸き起こり、続く『ファンファーレ』では観客1人1人が手を高く上げながら、会場と舞台の空気が一丸となっていく。熱気が最高潮になったところで放たれたのが『Shake & Shake』。カラフルな照明がステージを彩り、まるでパーティー会場さながらの雰囲気に満ちていた。
ついこの前のGWまで、sumikaは数々の春フェスやイベントに出演していた。
「どんなフェスに出ても、対バンをしていても、ATTiC ROOMのみんなに喜んでもらえるかを考えていました。自慢の家族になりたいと思っています。」
そんなMCの後に披露されたのは、ライブ終盤で演奏されることの多い『彗星』。<数年経って大人になって/このままじゃ終われない/意地っ張りな自分がまだいるんだ>と歌うこの曲は、「ATTiC ROOMのみんなの前では素直でいたい」と語っていた、今のsumika自身の気持ちとも重なっているのかもしれない。
本編ラストに歌われたのは、1st Mini Album『新世界オリハルコン』収録曲の『ほこり』。真っ直ぐなメッセージと温かい演奏に、会場は深い感動に包まれていた。
このセミファイナルの翌日、2022年5月17日に結成9周年を迎えたsumika。アンコール1曲目で演奏されたのは『10時の方角』。サビの<はじまり はじまり>のフレーズが印象的なこの楽曲は、10周年に向けた祝祭の開始を意味しているのかもしれない。
そんな10周年イヤーに突入することについてメンバーそれぞれが触れた後、「これからのsumikaを一緒に作っていってほしい」と披露されたのは、レコーディングもリリースも決まっていないという未完成の新曲『透明』。この楽曲が完成する時、彼らには一体どんな景色が見えているのだろうか。10周年イヤーに向けた期待を高めつつ、ライブは幕を閉じた。
いつもは計算し尽くされたような、1ミリも目を離させないライブを見せるsumikaだが、ファンクラブ限定という特別なライブだからか、今回はどこか余白が残されているような印象を受けた。初めての試みを挟みつつも、今までのsumikaを辿るような演出がいくつか組み込まれていたのも印象的で、いわばこのライブは8年間のsumikaの集大成の意味も込められていたのかもしれない。
翌日のファイナル公演では、9月から来年2月にかけての全国ツアー開催が発表された。10周年に向けた扉は、今開けられたばかりだ。
【セットリスト】
- 茜色の群青
- MY NAME IS
- イナヅマ
- ソーダ(※小川メインボーカル)
- enn(※小川・片岡の歌唱パートチェンジ)
- アネモネ(※アコースティックアレンジ)
- 春風(※アコースティックアレンジ)
- ふっかつのじゅもん
- ライラ
- ファンファーレ
- Shake & Shake
- 彗星
- ほこり
- 10時の方角(アンコール)
- 透明(アンコール/新曲)