【ディスクレビュー】「ハッピーエンドへの期待は」マカロニえんぴつ
「ハッピーエンドへの期待は」マカロニえんぴつ
2022年1月12日(水)にリリースされた、マカロニえんぴつのメジャー1stフルアルバム『ハッピーエンドへの期待は』。
『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』の主題歌『はしりがき』、『JR SKISKI 2020-2021 キャンペーンテーマソング』の『メレンゲ』など錚々たるタイアップ曲が並んでいる点からも、マカロニえんぴつがこの1~2年で多くの人に注目されるバンドに成長したのを感じられる。
14曲中10曲がタイアップといういわば「縛り」付きながらも、マカロニえんぴつらしさは決して埋もれることなく、むしろ光っているように思う。
例えば、『ワルツのレター 』に登場する<希望の歌が残ってないなら おれが作ってやる>の歌詞は、『ヤングアダルト』の<夜を越えるための唄が死なないように>とリンクしているようにも感じられるし、表題曲の『ハッピーエンドへの期待は』の主人公と<君>の関係は、『恋人ごっこ』で描かれている男女の姿と重なるようにも思える。(これは主題歌となった映画『明け方の若者たち』の影響かもしれない)
ある雑誌のインタビューで、はっとりが作詞について「パーソナルに潜む共感性(普段表に出さないけれど実はこうでしょ?あなたもそうでしょ?という気持ち)を歌いたい」と発言していた。おそらく、その根っこが変わっていないから、どんなタイアップ曲でも「マカロニえんぴつらしさ」を保てるのかなと思う。
一方で、アルバム初収録の曲たちも既発曲に負けじと存在感を放つ。ハードロックなサウンドと寸劇のギャップに度肝を抜かれる『TONTTU』があったり、弾き語りのみでシンプルに構成された『キスをしよう』があったりと、ジャンルレスな楽曲が詰まっている。
また、マカロニえんぴつの楽曲は1曲の中でも変化を見せてくるのが特徴だろう。
『ハッピーエンドへの期待は』は後半から6/8拍子で刻まれるし、『トマソン』の2番では唐突なレゲエサウンドが挟まる。1曲ずつではなく、1曲の中でも異なる表情を楽しませてくれるのだ。だからこそ、マカロニえんぴつの楽曲はエンディングまで気が抜けないし、ついじっくり聴き入ってしまう。
一昨年のメジャーデビュー、昨年のレコード大賞最優秀新人賞受賞。コロナ禍という逆風の中で、マカロニえんぴつは一歩ずつ着実に歩みを進めてきた。躍進を続けるマカロニえんぴつへの期待は、今後も高まるばかりである。