【書評】「星屑」村山由佳

「星屑」感想・レビュー

舞台やテレビで笑顔を見せている芸能人たち。彼らを裏で支えている芸能マネージャー。華やかな世界の住人のように思えてしまうけれど、彼らもみな同じ人間だ。誰かに嫉妬し、立ちはだかる壁に怒りをぶつけ、自分の不甲斐なさに悩む。『星屑』は、華々しい世界で生きている人々の「普通の人間」としての姿に焦点をあてた物語である。

舞台は大手芸能事務所「鳳プロ」。事務所主催の新人発掘オーディションで福岡に来ていたマネージャーの樋口桐絵は、オーディション後に訪れたライブハウスで唯一無二の歌声をもつミチルと出会う。東京に帰った後も、桐絵は彼女のことが忘れられない。一方で、肝心のオーディションは真由という女の子がグランプリに決定したが、彼女は実は鳳プロの専務の娘だった。事務所では真由を大型新人として売り出すことが決まっているから、たとえミチルを東京に連れて来たとしても、デビューさせることはできない。そう周囲に反対されながらも、桐絵は再び1人で福岡を訪れ、ミチルをスカウトしに行く。

とにかく展開が目まぐるしく、章が進むたびに1つ事件が起こっているような感じだが、それも芸能界という動きの激しい世界を表しているように思う。そして、私が本作で最も魅力に感じたのが、登場人物すべてのキャラクターが立っている点だ。詳細は伏せるが、村山由佳はキャラクターの1人1人にドラマをつくるのが上手い。今作の主人公は桐絵になるのかと思うが、読み方によってはミチルや真由の成長物語とも捉えられる。どの人物に感情移入するかによって、また違った物語を堪能できるはずだ。

欲を言えば、ミチルと真由が才能のある2人であるゆえに話が良いほうへとばかり進んでいくので、もう少し芸能界の厳しさを描いてもほしかった。とは言え、登場人物の奮闘ぶりを見て、自分も頑張ろうと思えるのは間違いないだろう。