【ライブレポート】Official髭男dism「SHOCKING NUTS TOUR」 2022.12.21@仙台サンプラザホール

 2022年9月より開催されたOfficial髭男dismの全国ホールツアー『SHOCKING NUTS TOUR』。正直なところ、ライブを見るまでは今回なぜホールツアーなのか疑問だった。もちろん日程の都合もあるとは思うが、前回はアリーナツアーだったし、今のヒゲダンならさらに大きなステージも夢ではないはず。それなのに、なぜこのタイミングでホールツアーなのか。

 そんな疑問は、ライブを見て解消された。彼らはきっと、“今の自分たちが音を鳴らしたい場所”として、あえてホールを選んだ。今回のツアーは、ホールでやることに意味があったのだ。

 Official髭男dismは2022年6月に結成10周年を迎えた。つまり、今回のツアーはバンドが大きな節目を迎えてから初めて行われたものになる。この10年、特に直近2~3年で、バンドを取り巻く状況は大きく変わった。開始早々、小笹(Gt)による「Pretender」のイントロのギターリフが鳴り響くと、盛大な拍手が沸き起こった点からも分かる。“ヒゲダン”の知名度は高まり、ライブ会場に訪れる世代も幅広くなった。この10年を振り返って、今ステージに立つ4人はどんなことを思っているのだろう。

 そんなことを考えていたら、セットリストは「コーヒーとシロップ」「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」など、過去にライブハウスでのツアーでよく演奏されていた楽曲が続いた。まるで今までのヒゲダンの軌跡をなぞるようだ。自分たちが少しずつ歩んできた日々が、こうして今に繋がっている。そんなことを彼らは伝えたかったのかもしれない。

 本公演での1番のハイライトは、ラストに披露された「破顔」だ。〈名前は知らんよ/でもありがとう〉などの歌詞から、この曲にはファンへの感謝が込められていると解釈できる。2番サビまで歌い終えたところで、「よかったら一緒にやってください」と告げた藤原(Vo/Pf)が持っていたのは、ライトを灯したスマートフォンだった。無数のスマホライトが会場中を照らす中、〈訪れる夜を/生き抜くための大事な光を/宿してる誰も/届いてるちゃんと〉の歌詞が重なる。私たちの想いは、彼らにもちゃんと届いていると教えてくれているようだった。

「ミックスナッツ」

 本ツアーでOfficial髭男dismが伝えたかったこと。それは他でもない、10年間支えてくれたファンへの感謝だろう。だからこそ、今回のツアーはドームやアリーナといった広い会場ではダメだった。彼らは観客としっかりと目線を交わせる距離で、成長した自分たちの音楽を届けられる場所としてホールを選んだのではないか。

 本公演ではもう1つ、まだ音源化されていない新曲も披露されるサプライズがあった。藤原いわく「自分たちが曲を送り出すことを空を飛んでいく風船に例えた楽曲」だという。優しいピアノの音色と藤原の真っ直ぐな歌声で届けられた新曲。それはまるで、近くで自分たちを見守ってくれているファンへのプレゼントのようだった。