【レビュー】「踊ろう命ある限り」クジラ夜の街

「踊ろう命ある限り」クジラ夜の街

 「カルペディエム」という言葉がある。ローマの詩人・ホラティウスの詩に登場するもので、「その日をつかめ」という意味のラテン語だ。クジラ夜の街の『踊ろう命ある限り』を聞いた時、真っ先に思い浮かんだのがこの言葉だった。

 2023年春にメジャーデビューを控える彼らにとって、“プレデビュー1st配信シングル”となる今作。タイトルからも想像できるように、込められているのは「今を精一杯謳歌すべきだ」というメッセージだろう。曲中で彼らは〈断言する/僕らに来世は無いぜ〉と歌う。ただし、そこに悲観や絶望といったネガティブな心情は感じられない。むしろ、続く〈この世はボーナスです/謳歌しようぜ〉や、語り口調の〈爺さんになったら/古本屋を開いて子どもにおとぎ話をしたいな〉からは未来への期待感が読み取れるし、左右から聞こえるギターの音色は胸が弾む様子を表すようだ。

 人生は思っているよりも短い。だからこそ良いのかもしれない。時間が有り余るようでは、無駄なことばかりして過ごしてしまいそうだから。自分にとって大切なもの──例えば音楽と、気の合う数人の友人と、かけがえのないパートナーだけを連れて、好きなことをやれれば十分だ。

 終わりを意識してこそ、今を全力で生きられるのかもしれない。そんなことを考えさせられる1曲だ。

「踊ろう命ある限り」