Aqua Timez「虹」の話

最初に断っておくと、この文章はもともと2022年に書いたものを改稿している。

当時通っていたライター講座の「自分が一番最初に好きになった曲のレビューを書く」という課題で、私が選んだのがAqua Timezの6thシングル表題曲「虹」だった。
書きながら、「この曲をライブで聴くことはもうないんだよな」と考えていたことを覚えている。


「虹」がリリースされた時、私は中学2年で、所属していた吹奏楽部を辞めようか真剣に悩んでいた。

強豪校だったのもあり、練習は放課後毎日、土日も9時から18時まで。噂には聞いていたので覚悟のうえの入部だったが、実際に経験してみると体力的にも精神的にもかなりキツかった。

さらには、同級生との実力の差も感じていた。
周りがすんなり吹けるようなフレーズがいつまで経っても出来なかったり、音が大きく出せなかったり……今思えば人と比べすぎていたのだが、当時の私は「同じように1年間練習してきたはずなのに」と落ち込み、部活に行くのがだんだん嫌になっていたのだ。

一方で、憧れて入った部活。ここで辞めてしまうのもなんだかもったいないような気がして、決断できずにいたのである。

テレビで流れていた「虹」を偶然耳にしたのはその頃だった。

太志(Vo)の優しい歌声で繰り返される〈大丈夫〉のフレーズが、まるで悩んでいる自分に向けて歌われているように思えた。
それまでにも音楽を聴くことはあったが、そんなふうに感じたのは「虹」が初めてだった。

「虹」はAqua Timezとしては初の4つ打ちを取り入れた楽曲で、軽快で爽やかなサウンドが前向きな気持ちにさせてくれる。転調したラストのサビも、暗いトンネルを抜けて明るい外へ出た時のような開放感がある。

加えて、私を勇気づけたのは歌詞の内容だった。
〈涙を流しきると 空に架かる〉のように、歌詞は悲しみを雨、幸せを虹に喩えていると解釈できる。雨が降った後に虹が現れるように、悲しみを乗り越えたら幸せが待っていると教えてくれているように感じたのだ。

もう少し頑張れば、楽しいと思える日が来るかもしれない。そう思った私は、結局部活を辞めなかった。

相変わらず練習尽くしの日々に疲れ切っていたし、劇的に上達するようなドラマみたいな展開もなかったが、中学3年の最後の演奏会を終えた時には達成感があった。3年間を振り返って、Aqua Timezに救われたな、とも思った。

2018年にバンドが解散するまで、私はCDを買い続けたし、ライブにも足を運び続けた。最後のライブのアンコール、本当にラストの曲として「虹」が披露された時、寂しいと同時に感謝もした。

音楽には人を勇気づける力がある。そう、私に最初に教えてくれたのはAqua Timezだ。大人になるにつれて好きなアーティストは増えていく一方だが、この事実は一生変わらない。
彼らを好きになったきっかけは「虹」だったが、それ以外にも好きな曲、あらゆる場面で救われた曲がたくさんある。

2024年7月11日、飛び込んできたニュースは本当に突然で、驚かされるものだった。

〈また走り出す時は 君といっしょ〉

もう更新されないと思っていた私とAqua Timezの物語は、どうやらまだ続くようだ。
そのことが、今はたまらなく嬉しい。