【ライブレポート】sumika「Ten to Ten to 10」 2023.05.14@横浜スタジアム

いつのだよw っていうレポート。(今9月)
この辺り、本当に忙しくて書く暇なかったんです、、すみません、、

9月27日に映像作品が発売されたということで、記念に公開します←

sumika「Ten to Ten to 10」 2023.05.14

2023年5月14日、横浜スタジアムには1日限りのエンターテインメント空間が生まれていた。

『Ten to Ten to 10』は、sumikaのバンド結成10周年を記念したライブだ。会場の外に張り巡らされた「sumika」「10周年」のフラッグ、カラフルなガーランドが彩るステージと、辺り一面はお祝いムード。とはいえ、この日のライブは当初予定していたものとは大きく違っていたのだと思う。

まずは、黒田隼之介(Gt/Cho)の不在だ。本公演の開催を発表した昨年11月には、まさかこの日が3人でのステージになることは誰も予想していなかっただろう。私としても4人で立って欲しかった想いが強く、開演前は少し複雑な気持ちを抱いていた。

「4人で立つ」という想いは、残されたメンバーやスタッフも同じだったのだと思う。sumikaの軌跡を辿ったオープニングムービーには、黒田の姿も映し出されていた。映像が終わり、片岡健太(Vo/Gt)、荒井智之(Dr/Cho)、小川貴之(Key/Cho)が登場。ステージ下手、いつも黒田が立っていた場所には彼のギターが置かれていた。

ライブの幕開けは、結成後に初めて制作された曲である「雨天決行」だ。スクリーンには4分割された映像が映し出される。ステージ上の片岡、荒井、小川、そして黒田のギター。まるで4人が奏でているかのような演出に、開始早々涙があふれてしまった。

「ふっかつのじゅもん」では、片岡が黒田のギターを手に取り、ギターソロを奏でる。これまで何度も聴いてきた、でも今まで以上に特別な想いが込められたギターフレーズが、片岡の手によって横浜スタジアムに響きわたった。弾き終えた後、「代わりは誰にもできない」と語った片岡。ステージに立っているのは3人だが、きっとこの日は間違いなく、4人で立った横浜スタジアムだったのだ。

「ふっかつのじゅもん」以降は、sumikaらしい楽しさあふれるステージが続いた。「1.2.3..4.5.6」「ソーダ」「Porter」と、これまでのsumikaの軌跡を表すように次々と曲が投下されていく。「enn」「わすれもの」では小川がメインボーカルをとり、爽やかな歌声を響かせた。直前のMCで小川は「昔、関内駅で弾き語りをしていた」と語っていただけに、3万3000人の前で歌っている姿には感慨深いものがある。この瞬間きっと、彼の音楽人生の中の“点”と“点”が繋がったことだろう。

16曲を終えたところで、アコースティック形態“sumika[camp session]”でのステージへ。sumikaのライブにしてはMCが少ないと思っていたが、ようやくここで折り返しらしい。一体今日何曲やるんだ?という疑問が沸く中、メンバーはステージ中央から伸びた花道をわたってサブステージへ向かっていく。“キャンプファイヤーを囲むように演奏したい”というバンドのコンセプトにあわせ、ステージの真ん中では焚き火の炎がゆらゆらと揺れていた。

1stミニアルバム『Sugar Salt Pepper Green』収録の「知らない誰か」「ユートピア」に続き、アコースティックアレンジされた「Traveling」を披露。しかし、ここでまたもや予定外の事態が発生する。横浜スタジアムは野外会場。そう、「雨」だ。この日は昼間こそ耐えていたものの、開演してからはずっと雨が降り続いており、会場はレインコートをかぶった観客で埋め尽くされていた。屋根のないサブステージでの続行は難しいと判断し、1度メンバーはメインステージへ。屋根を設置するまでの繋ぎとして、セットリストにはなかった「ここから見える景色」を急遽披露した。予定通りにいかなかった悔しさはきっとあるだろうが、これはこれで観客にとっては嬉しいサプライズだ。

MV初披露となった「IN THE FLIGHT」を経て、ライブはいよいよ後半戦へ。「絶叫セレナーデ」では複数の巨大バルーンが現れ、終盤では荒井がバズーカを発射するなど大きな盛り上がり。「マイリッチサマーブルース」ではサビで観客が一斉にタオルを回し、片岡と小川はハンドマイクでステージを左右に駆け回る。さらに「The Flag Song」や「チェスターコパーポット」など7曲を少しずつ取り入れたメドレーへと繋がり、会場の熱気は最高潮に達した。

「悲しいことがあって気づきました。僕にとってsumikaというバンドは、最初は自分の作った曲を披露したい、それだけでした。でも今はsumikaの曲を歌いたいのと同じくらい、sumikaの曲を聴きたいです。いつの間にか、僕はsumikaのファンになってしまったみたいです」

バンドを続けていく意志を込めて片岡がそう語った後、黒田が作詞作曲を務めた「明日晴れるさ」を披露。その後は「Shake & Shake」「オレンジ」と会場を温かな雰囲気に包んで本編を締めくくった。

sumikaというバンドは何度も苦難を乗り越えてきた。そして彼らはまた、歩き始めようとしている。鳴り止まないアンコールに応えてステージに登場した彼らは、新曲の「Starting Over」を披露。ラストサビ直前では大きな花火が打ち上がり、会場は歓声と拍手で埋め尽くされていた。

「Shake & Shake」

エンディングムービーが流れたあと、サブステージに再びメンバーが登場。アルバム『For.』のシークレットトラックである「雨天決行 -第二楽章-」を披露した。偶然か否か、「雨天決行」はこの日のライブを表す言葉としても、今のsumikaを表す言葉としても一致している。ふと、私にとってsumikaは晴れバンドだったことを思い出した。彼らを見に行った野外フェスで、雨に打たれた記憶が1度もない。それなのに、なぜ今日はこんなに強く雨が降っているのだろう。

〈Too late? tonight〉〈この声が君に届くように〉の部分で、空を指さしながら、「きっと届くから!」と叫ぶ片岡。3万3000人のシンガロングが、何度も何度も繰り返し会場内に響きわたる。その声はきっと横浜スタジアムを越え、空の上の“君”にも届いたのではないかと思う。

メドレーの7曲を含めると総曲数40曲。公演時間は4時間。この数字だけを見ても、sumikaがこの日をどれだけ大切にしていたかが分かるのではないだろうか。公演から3日後の5月17日、sumikaはバンド結成10周年を迎えた。ライブでは2本のツアー開催も発表され、11周年、15周年、20周年に向けて、彼らはまた進み続ける。雨が降ろうが槍が降ろうが、彼らの歩みは止まらない。