【書評】「ラッシュライフ」伊坂幸太郎

「ラッシュライフ」感想・レビュー

「神」と崇める男性を解体することになった青年、偶然にも拳銃を拾った失業者、同級生と再会した泥棒の男、不倫相手と殺害計画を企てる女──ちょっと変わった人物たちの、それぞれの“特別”な1日。視点を切り替えながら、4つの物語が同時に進んでいく。

この物語の感想をネタバレ無しで書くのはだいぶ難しい。唯一言えるとしたら、誰もが1人で生きているのではなく、何かしらの形で繋がっていること。作品の冒頭でも、それぞれの視点から同じものが描かれている。仙台駅、駅前の展望台、エッシャー展のポスター、スケッチブックを手に佇む海外人、新しくオープンしたコーヒーショップ。一見繋がりのないようで、彼らは確実に同じ場所で生きている。

「人生については誰もがアマチュアなんだよ」──作中に登場する人物たちの人生は、本当に多種多様だ。誰1人として同じ生き方がない。それでも皆、不器用ながらも懸命に1日を生きている。見ず知らずの誰かに、バトンを渡しながら。

こんなちょっと変わった人たちでさえそうなのだから、フィクションの世界でない、現実を生きる私たちだってきっと同じだろう。生きていくことに、少し勇気をもらえる作品。