【書評】「スター」朝井リョウ

「スター」感想・レビュー

ブログ、Twitter、Instagram、YouTube──、個人が自由に発信できるプラットフォームは今や数多く存在する。誰もが好きなことを発信するだけで、多くの人の注目を集められる可能性を秘めた時代だ。一方で、個人の趣味嗜好が細分化されたことによって、誰もが名を知る“スター”は生まれにくくなっている。

片方は有名監督のもとで監督補助として、もう片方はYouTubeチャンネルで映像制作を手がける2人の青年の物語。

前者は高品質なものを提供できるけれど、有料で制作時間もかかるうえに拡散されづらい。後者は無料で提供できるから一気に拡散されるけれど、視聴者の消費スピードに合わせるために大量生産が求められるため低品質になりやすい。大学卒業後、対称的な道を歩み始めた2人は、お互いの環境を羨ましく思いながらそれぞれ悩んでいく。

メインの登場人物2人以外に、小説内にはさまざまな考え方をもった人物が登場する。質よりも圧倒的に生産量を優先するYouTubeチャンネル運営者、経営状態の悪化に気づきつつも頑なに作品配信を拒む映画監督、フェイク動画でバズを狙ろうとするインターネットテレビ局の代表。それぞれ価値観は全く異なるのだが、どの人物の発言にも少なからず共感してしまう部分があるのが面白いところだ。また、こうした価値観の違いは映像業界だけでなく、医療や料理の分野でも存在することが描かれている。

作中でとくに印象に残っているのが、現代を星の形に例えた登場人物たちの会話だ。

「星といえばあの形って感じだけどさ、あのマークの形をした星なんて、空のどこにもないのね。」
「あの星形をきれいに描くっていうことを、ずっと頑張ってきたんだと思うの。」
「でももう、自分が見えた星の形を描いて、これが星ですって言っていく時代になったんだよね。」

さまざまな発言に触れた後に上記の会話を聞くと、どの人物の考え方も間違ってはいないんだろうなと思う。大切なのはきっと、自分が何を重視すべきか。少しくらい不器用だって、自分だけが描ける星形を堂々と胸を張って「星」だと言えれば、それで十分なのかもしれない。