【レビュー】「壱」優里

ストリーミング再生5億回(※アルバムリリース時点)を記録した「ドライフラワー」、そのアンサーソングとも言える「かくれんぼ」、自身初の地上波ドラマ主題歌となった「ベテルギウス」など、合計16曲を収録した優里のアルバム『壱』。まさに、優里の代名詞と言えるアルバムが誕生したと感じる。

「ドライフラワー」

16曲もの壮大なボリューム、加えて既存配信曲が10曲もあるとなると、正直なところ途中で飽きるかと心配した。しかし、そんな心配は全くいらなかった。おそらく、今回アルバムで新たに発表された曲たちのさじ加減が絶妙なのだと思う。ダークな匂いを漂わせながらも懸命に生きることを訴える「花鳥風月」、スマホの通知をきっかけに相手の浮気を疑う女性のリアルな心情を描いた「スマホウォーズ」など、アルバムで初収録された楽曲たちが、既存曲にはなかった要素をしっかりと埋めてくれている。

「ベテルギウス」

中でも着目すべきは、7曲目に収録された「レオ」だろう。歌詞は犬目線で描かれていて、飼い主との出会いから別れまでを時系列に沿って歌っている。ペットがいる人なら思わず自身を重ね合わせて聴いてしまうだろうし、ペットがいない人でも、両親や自分の子どもを思い出して聴くと染みるものがあると思うのだ。優里=「恋愛ソング」だと思っている人にこそ、特に聴いてもらいたい楽曲である。

「レオ」

そして、今作を通して聞くと、改めて優里の歌唱力の高さをひしひしと感じた。「ミズキリ」「シャッター」、先述の「レオ」など、優里の楽曲は2番の間奏後に落ちサビがくるパターンが多い。同じ歌詞が繰り返されるのだけれど、落ちサビと通常のサビがしっかりと歌い分けられていて、ここでぐっときてしまう人が多いと思う。

今までの歩みが詰まった記念すべき1stアルバムを引っ提げ、3月からは新たにツアーも始まる。そして2022年もまた、優里からどんな名曲が放たれるのか目が離せない。その先に待つ、『弐』枚目、『参』枚目のアルバムも楽しみだ。